遺言書は相続おいて、絶大の効果を有します。
しかし、遺言書の内容にて、「全財産を愛人に相続させる」というドラマのような出来事が起きても、遺言書の内容は絶対ですからその効力は発動します。しかし、本来、遺産を相続できたはずの残された遺族はたまったものではありません。
実は、そのような理不尽なことが起きても救済措置があります。今回はそんな相続における救済措置を紹介します。
相続人同士の公平さを保つ「寄与分」と「特別受益」
「亡くなった子被相続人の事業に資金提供をした」、また逆に「被相続人から贈与を受けていた」などの生前の事情を考えずに法定相続分で遺産を分けると、相続人の間での取り分が不公平になることがあります。
そこで、被相続人に特別な援助(財産の維持、または増加についての特別な貢献)をした相続人には、法定相続分以上の財産を取得させる寄与分と言う制度があります。反対に被相続人から生前に援助を受けていた分は特別受益といって、取得できる遺産から差し引く制度もあります(遺産から差し引くことを持ち戻しといいます)。
相続人同士が納得できれば、寄与分や特別受益の金額については、以下のようになります。ただし、話がまとまらないときは家庭裁判所の審判によって決めることもできます。
寄与分
- 寄与分のある相続人:(遺産ー寄与分)×自分の相続割合+寄与分
- 寄与分のない相続人:(遺産ー寄与分)×自分の相続割合
特別受益
- 特別受益のある相続人:(遺産+特別受益)×自分の相続割合ー特別受益
- 特別受益のない相続人:(遺産+特別受益)×自分の相続割合
最低限の権利を守る「遺留分」
遺言書の内容は、原則として法定相続分や相続人の協議の内容よりも優先されます。しかし、例えば家庭を持った男性が遺言書で「愛人に全財産を相続させる」と指定したら、残された家族は生活に困ってしまいます。
相続には、相続人の生活の基盤を守る役割があり、民法で一定の相続人が最低限もらえる相続割合を遺留分として定めています。遺留分を請求することを遺留分減殺請求(2019年7月以降は金銭債権となるため、遺留分侵害額請求)といいます。
遺留分は、配偶者、直系卑属(子や子孫)がいる場合は、被相続人の遺産の2分の1、直径存続(親)だけの場合は3分の1の遺産を請求することができます。もしも、同じ順位の相続人が複数いる場合は、その順位の取り分から人数分で等分します。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分減殺請求はどうやるの?
遺留分減殺請求は、相手に対して「私の遺留分に相当する遺産を返してください」と意思表示をすれば良いのですが、実際は、後々(言った、言わない)の争いになることもあるので、配達証明付きの内容証明郵便で行うことが多いです。
ただし、解決しない場合には裁判になることもあります。また、遺留分を侵害されたことを知ったときから1年、あるいは相続開始から10年が過ぎると遺留分減殺請求はできなくなるので注意してください。