前回は、遺言書の取扱いと役割を紹介しました。
遺言書は相続税対策においてとても重要です。しかし、遺言書がらみでのトラブルがあるのも事実です。
今回は遺言書で生じる可能性のあるトラブルをまとめましたので、紹介します。
2つの遺言書がある場合どっちの遺言書が有効?
亡くなったAさんのお通夜の振舞いの席で思いもよらない争いが起こってしまいました。
Aさんの長男の嫁が「お父さんの遺言です」と言って「孫に全財産を相続させる」と書かれた公正証書遺言を持ってきたのです。
ところがAさんの妻も「妻にすべての財産を相続させる」と言うAさんの自筆の遺言書を持っていました。長男の嫁は公正証書の方が正式の遺言書なのだから遺産は孫のものと言って譲りません。
一方妻は、「私の遺言書の方が最近書かれたものだから、こっちの方が有効よ」とこちらも譲りません。葬儀が終わったばかりなのに遺産をめぐる争いが始まってしまい他の家族は困り果てました。
では皆さんに問題です。果たしてどちらの遺言書の方が有効なのでしょうか?
原則、日付の新しい遺言書が有効
このケースのように複数の遺言書があり、その内容に矛盾があるときは、原則として日付の新しい遺言書が有効になります。
遺言書には、自筆証書、公正証書の等の種類がありますが種類と有効性は関係ありません。Aさんの場合、日付が新しい妻の遺言書が有効になると考えられます。
相続人の1人が遺産を独占!?自分の分はもらえないの?
Bさんの母は今年なくなりました。
葬儀の後、兄弟姉妹が揃ったところで、長男が母の遺言書を持ってきました。そこには、「全財産を長男に相続させる」と書かれていました。
母親は生前、嫁に行ったBさんや妹よりも、長男を大変可愛がっており、いかにも母親が遺言書に書きそうな内容です。
しかし、Bさんにしてみれば、長男が遺産を全て独り占めにして相続すると言うのはどうにも納得がいきません。Bさんは自分の相続する分を主張することはできないのでしょうか。
遺留分を主張することにより遺産を取得できる
一定の相続人には最低限もらうことのできる遺留分があり、意思表示することで請求することができます。
つまり「遺留分にあたる遺産を私に返してください」と、主張することができるのです。
裁判などはせずに、相手に伝えるだけで良いのですが、証拠が残るように内容証明郵便なので通知するのが良いでしょう。相手が応じなければ、家庭裁判所で訴えを起こすこともできます。
まとめ
今回は遺言書がらみでのトラブルをまとめました。遺言書は効力が強い分、取扱いを間違えればトラブルにつながります。遺言書は相続税対策においてとても重要です。しかし、遺言書がらみでのトラブルがあるのも事実です。
正しい知識をつけたうえで相続対策を行いましょう。